「スマート農業技術活用促進法」という法律名を、ニュースや農業関連の情報サイトで目にした方もいるのではないでしょうか。2024年10月1日に施行されたこの法律は、スマート農業技術の普及を後押しする目的で作られました。
農業従事者の減少や高齢化が進むなか、国はなぜこのタイミングで新しい法律を制定したのでしょうか。本記事では、法律の対象者や支援内容、2つの認定制度のしくみ、申請の流れまでを、農林水産省が公表している資料をもとに整理します。
スマート農業技術活用促進法は、正式名称を「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」といいます。2024年6月14日に成立し、6月21日に公布されたのち、同年10月1日に施行されました。
法律の目的は、スマート農業技術の活用を通じて農業の生産性を高めることです。農業者の減少など、農業を取り巻く環境の変化に対応するための制度と位置づけられています。
法律の背景には、農業現場が抱えるいくつかの課題があります。
こうした課題に対応する手段として、ロボットやAI、センサーなどを活用するスマート農業技術への期待が高まっています。スマート農業技術活用促進法は、技術を使う農業者側と、技術を作る企業側の両方を支援する法律です。両方を後押しすることで、普及のスピードを上げる狙いがあります。
参照元:農林水産省「スマート農業技術活用促進法について」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/houritsu.html)
この法律の施行によって、農業の現場や関連する産業にどのような変化が生まれるのでしょうか。
法律に基づく認定を受けた農業者は、融資や税制面での支援措置を活用できます。スマート農業技術の導入にかかる負担を抑えながら、計画的に取り組みを進めやすくなります。
支援の対象は農業者だけではありません。農機メーカーやサービス事業者、研究機関なども、技術の開発や供給に関する計画の認定を受けることで、融資などの支援を受けられます。
法律では、農業者とスマート農業技術を提供する企業、大学や公設試験研究機関などが連携して取り組む体制づくりも想定されています。技術の開発から現場での実装まで、一体的に進めやすくする仕組みです。
スマート農業技術活用促進法は、農家だけを対象とした法律ではありません。技術を使う側と作る側の両方を支援し、産地全体での導入を後押しする制度です。
参照元:農林水産省「スマート農業技術活用促進法について」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/houritsu.html)
参照元:農林水産省「スマート農業技術活用促進法の概要資料」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/houritsu-15.pdf)
法律の中心となるのが、2つの計画認定制度です。
生産方式革新実施計画は、農業者側が申請する計画です。スマート農業技術の活用と、それに合わせた新しい農産物の生産方式の導入をセットで行う取り組みが対象になります。
農林水産省の説明では、農業者またはその組織する団体が申請者となります。認定を受けるには、作付面積または売上高のおおむね過半を占める規模で取り組む必要があります。あわせて、労働生産性を5年間で5%以上向上させることも要件です。実施期間は原則5年以内とされており、果樹など植栽を伴う場合は10年以内まで対応できます。
開発供給実施計画は、スマート農業技術の開発や供給を行う企業などを対象とする制度です。農機メーカーやサービス事業者、大学、公設試験研究機関などが申請者となります。
農家の立場で情報を集める場合は、この制度に深入りする必要はありません。自分自身が検討する際は、生産方式革新実施計画を中心に確認すれば十分です。
参照元:農林水産省「スマート農業技術活用促進法について」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/houritsu.html)
参照元:農林水産省「スマート農業技術活用促進法の概要資料」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/houritsu-15.pdf)
参照元:近畿農政局「生産方式革新実施計画の認定について」(https://www.maff.go.jp/kinki/seisan/smart/attach/pdf/nintei-15.pdf)
農林水産省が示す資料では、対象となるスマート農業技術がいくつかの分類に整理されています。
ロボットトラクターや自動操舵システムなど、走行や操舵の一部を自動化する技術です。大区画の圃場での直進作業や、長時間の操舵作業の負担軽減を目的に導入が進んでいます。
農薬散布や生育状況の空撮調査などに使われる技術です。人の手で行うと時間のかかる作業を、短時間で終えられる点が特徴です。
蓄積したデータをもとに、生育状況や病害虫の発生を予測する技術です。防除や施肥のタイミングを判断する材料として活用されています。
収量センサー付きのコンバインや、ハウス内の温度・湿度を管理する環境制御システムなどが該当します。
経営管理システムや家畜の生体管理システムなど、データをもとに作業や経営を管理する技術も対象に含まれます。
対象となる技術は幅広く示されていますが、「スマート農業に関する技術であれば何でも対象になる」わけではありません。認定を受けるには、導入する技術と生産方式の組み合わせが、法律の定める要件を満たしている必要があります。
参照元:農林水産省「スマート農業技術活用促進法の概要資料」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/houritsu-15.pdf)
認定を受けた農業者や事業者は、税制や金融面の支援措置を活用できます。具体的には、農業用機械等の取得にかかる法人税・所得税の特別償却や、登録免許税の軽減などが用意されています。
金融面では、日本政策金融公庫による長期低利融資を利用できます。償還期限は最長25年、据置期間は5年以内です。計画の内容によっては、ドローンの飛行許可申請などの行政手続きが簡素化される場合もあります。
計画の認定を受けるプロセスそのものが、導入目標や実施体制を整理する機会になります。労働生産性の向上目標を数値で設定するため、導入後の効果を振り返りやすくなる点も特徴です。
スマート農業技術の活用と生産方式の見直しをセットで行うことで、労働生産性の向上を目指せます。農林水産省の説明では、認定を受けた農業者や事業者が税制・金融等の支援措置を受けられるとされています。
本法自体が一律に補助金を交付する制度ではありません。ただし、計画認定を受けることで、年度ごとの農林水産省の補助事業等でポイント加算や優先採択などの優遇措置を受けられる場合があります。
参照元:農林水産省「スマート農業技術活用促進法について」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/houritsu.html)
参照元:農林水産省「スマート農業技術活用促進法の概要資料」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/houritsu-15.pdf)
参照元:近畿農政局「生産方式革新実施計画の認定について」(https://www.maff.go.jp/kinki/seisan/smart/attach/pdf/nintei-15.pdf)
自動操舵システムやロボット農機などの導入には、まとまった費用が必要です。農林水産省の資料では、自動操舵システムの価格帯の目安として40万円〜250万円が示されています。ロボット農機では、1,000万円〜1,500万円が目安とされています。認定を受けて融資や税制優遇を活用できたとしても、初期費用そのものがなくなるわけではありません。
対象となるスマート農業技術は幅広く示されていますが、圃場の規模や形状、栽培している作物によって、効果の出やすさは異なります。導入前に、自分の経営に合う技術かどうかを確認する作業が欠かせません。
スマート農業技術の多くは、導入して終わりではありません。操作方法を覚えたり、収集したデータを活用したりする体制づくりも必要になります。
生産方式革新実施計画の認定を受けても、支援の内容は融資や税制優遇が中心です。導入費用の全額が補助されるものではないため、資金計画は別途立てておく必要があります。
参照元:農林水産省「スマート農業技術活用促進法の概要資料」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/houritsu-15.pdf)
参照元:農林水産省「自動操舵システム」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/forum/R2smaforum/mattingu/system.html)
生産方式革新実施計画の認定を受けるまでの流れは、次のとおりです。
どのスマート農業技術を、どの生産方式と組み合わせて導入するかを検討します。労働生産性を5年間で5%以上向上させるという目標を踏まえて、取り組み内容を固めていきます。
申請窓口である地方農政局等に事前相談をしたうえで、実施計画を作成します。労働生産性の算出には、農林水産省が用意している計算シートを活用できます。
作成した実施計画をもとに、地方農政局等の窓口へ申請します。申請に必要な様式は、農林水産省のウェブサイトで公開されています。
地方農政局等が、法律に基づく基本方針に照らして計画の内容を審査します。審査を経て要件を満たすと判断されると、認定・公表が行われます。
認定後は、計画の内容に沿ってスマート農業技術の導入と生産方式の見直しを進めます。実施期間は原則5年以内です。
相談や申請の受付時期は決まっておらず、随時行われています。計画の開始を予定している時期から、余裕を持って地方農政局等へ相談することをおすすめします。
スマート農業技術活用促進法は、農業者の減少や人手不足などの課題に対応するため、スマート農業技術を活用する農業者や、技術を開発・供給する事業者などを支援し、スマート農業の普及を促進する法律です。
2024年10月1日の施行以降、生産方式革新実施計画と開発供給実施計画という2つの認定制度を通じて、融資や税制優遇などの支援が用意されています。自動操舵システムをはじめとするスマート農業技術の導入を検討する際は、本法の支援対象になりうる点もあわせて情報収集を進めるとよいでしょう。導入の具体的な技術選びについては、自動操舵システムとガイダンスシステムの違いや自動操舵システムのCLASとはもあわせてご覧ください。
参照元:近畿農政局「生産方式革新実施計画の認定について」(https://www.maff.go.jp/kinki/seisan/smart/attach/pdf/nintei-15.pdf)
参照元:東北農政局「生産方式革新実施計画について」(https://www.maff.go.jp/tohoku/seisan/smart/houritsu.html)



※2025年8月29日調査時点。Googleで「自動操舵システム」と検索した結果の100位以内の公式HPの中から、日本国内で公表されているメーカーによる自動操舵システムの14製品の稼働速度を比較した最速値。IMUなどのオプション機能での速度も含む(編集チーム調べ)
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ALLYNAV
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FJDynamics
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トプコン
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| 製品名 | AllyNav AF305/AF718 自動操舵システム | FJD農機自動操舵システム | XD/AGS-2-SET・AES-35 |
| 初期費用 | 847,000円(税込)~ | 1,045,000円(税込)~ | 記載なし |
| 補正情報精度 | ≤±2.5cm | ≤±2.5cm | ±2~3cm |
| 速度 | 0.1~35km/h※デュアルIMUの場合 | 0.7km~12km/h (オプション:0.1km/h~) |
0.1km/h~25km/h |
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ALLYNAV
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FJDynamics
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トプコン
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|---|---|---|---|
| 対応可能経路 | ターン、直線、カーブ、曲線、Uターン、ピボット、90° | 直線、ピボット、平行カーブ、自動ターンA+ライン | 直進、枕地旋回、0.5m~小旋回性能(オプション) |
| オプション | ・リモコン&ハンドルボタン ・カメラ ・レベリングシステム |
・wifiカメラ ・物理ボタン ・ホール型センサー ・FAG独自RTK基地局 ・Bluetoothボタン |
・ホイールアングルセンサー(低速調整) ・枕地旋回機能 ・可変施肥機(散布マップ作成) ・Xlinks(ISOBUS非対応作業機でも制御可能) |
| ISOBUS対応 | 〇 | 〇 | 〇 |
| アップデート費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
| サポート体制 | 連携先の代理店によるチャット・電話などのサポート | チャットサポート・遠隔サポート・訪問サポート | フリーダイヤルコールセンター(平日9時-17時) |
| 保証期間 | 2年保証 | 最大2年保証 ※有償にて5年間延長保証にも対応。 |
1年保証 |
| 導入実績数 | 世界中で累計35万台以上(2025年6月時点)※1 | 世界中で20万台以上 国内で6,500台以上 (2025年6月調査時点)※2 |
記載なし |
※1:参照元:AllynavAG公式HP(https://www.landingpage-synergy.com/Hs7mDRdM/)
※2:参照元:FAG公式HP(https://www.fagcorp.com/voice)