RTK(Ntrip式)の自動操舵システムでは、補正データの受信やガイダンスアプリの動作にスマートフォンやタブレットを使用する場合があります。デバイス選びのポイントは以下のとおりです。
ガイダンスアプリやリアルタイムの地図表示をスムーズに動作させるため、CPUやメモリに余裕のある機種を選びましょう。動作が遅いと走行中の表示にラグが生じる可能性があります。
スマホ内蔵のGPSはガイダンス表示に利用できる場合がありますが、高精度な自動操舵には外付けのGNSS受信機が別途必要になることが一般的です。
屋外の圃場で使用するため、防水・防塵性能(IP67以上が目安)を備えたモデルや、専用の防水ケースの使用を検討するとよいでしょう。画面の視認性(輝度の高さ)も屋外利用では重要なポイントです。
RTK(Real Time Kinematic:リアルタイムキネマティック)とは、地上に設置した基準局と移動局(トラクター側)の2つの受信機で衛星信号を受信し、そのズレをリアルタイムで補正することで、誤差を数cm以内に抑える高精度な測位技術です。GPS単独では数メートルの誤差が生じることがありますが、RTKを導入することで測位精度が飛躍的に向上します。
RTKの補正信号を受け取る方式には、デジタル無線を使う「無線式」と、インターネットを使う「Ntrip(エヌトリップ)式」があります。Ntrip式は基準局から半径約20kmの範囲をカバーでき、無線式(到達距離3〜5km程度)よりも広範囲で利用できる点がメリットです。
Ntrip式のRTK自動操舵では、補正データをインターネット経由で受信するため、スマートフォンにモバイルデータ通信環境が必要です。SIMカード選びのポイントは以下のとおりです。
RTKの補正データ自体は大容量ではありませんが、ガイダンスアプリの地図表示やファームウェア更新なども考慮すると、月間3〜5GB程度の余裕があると安心です。長時間・広面積の圃場で使用する場合はさらに多めのプランを検討するとよいでしょう。
リアルタイムでの補正データ受信が必要なため、4G LTE以上の通信速度に対応したプランが望ましいです。データ通信の遅延が大きいと、自動操舵の精度に影響が出る可能性があります。
圃場は郊外や山間部に位置することが多いため、地方の通信エリアが充実している大手キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンクなど)の回線を利用するのが安心です。格安SIM(MVNO)を利用する場合も、どのキャリア回線を使用しているかを確認し、圃場周辺のカバー率を事前にチェックしておくことをおすすめします。
自動操舵システム(オートステアリング)とは、GNSS(GPS)衛星の信号を受信してトラクターなどの農業機械の位置を測位し、ハンドルを自動で制御することで設定した経路を自動走行するシステムです。既存のトラクターや田植え機などに後付けで搭載できる製品も多く、農機の買い替えなしでスマート化を実現できる点が大きな特長となっています。
トラクターの上部に設置し、複数の衛星から信号を受信して車両の位置を測位します。
受信した位置情報をもとに、ハンドルを自動で制御する装置です。
走行経路の設定や作業跡の確認を行うためのディスプレイです。専用タブレットやスマートフォンが利用される場合もあります。
測位情報と走行経路を照合し、ステアリングの修正指示を出す頭脳部分です。
GPS(Global Positioning System)はアメリカが開発・運営する衛星測位システムです。一方、GNSS(Global Navigation Satellite System)は衛星測位システムの総称であり、アメリカのGPSだけでなく、ロシアのGLONASS、EUのGalileo、日本の準天頂衛星「みちびき」など、各国が運用する衛星測位システムのすべてを含んだ呼び方です。
日本では「GPS」という言葉が一般的に使用されてきましたが、利用可能な衛星の種類が増えたことに伴い、近年では「GNSS」という呼称が広く用いられるようになっています。
動作原理としては、複数の衛星から発信される電波を地上の受信機で受け取り、各衛星との距離を計算することで現在位置を割り出します。受信できる衛星の数が多いほど測位精度が高まるため、GPS単独よりもGNSSとして複数の衛星システムを併用するほうが有利です。
農業分野でのトラクターや田植え機のガイダンスのほか、建設現場での重機の位置管理、測量業務などにも広く活用されています。農業では、GNSSガイダンスシステムをモニターに表示することで走行経路を「見える化」し、作業漏れや重複作業を防ぐことができます。
自動操舵補助装置は、GNSSガイダンスシステムで受信した位置情報を利用してトラクターのハンドルを自動制御し、設定された経路を自動走行させる装置です。
基本機能としては、直進走行の自動維持と旋回時の経路誘導が挙げられます。これによりオペレーターはハンドル操作から解放され、作業機の操作や周囲の確認に集中できるようになります。
長時間の圃場作業ではハンドル操作による身体的な疲労が大きな負担となりますが、自動操舵補助装置を導入すれば手放し運転が可能になり、疲労を大幅に軽減できます。また、モニター画面で作業跡をリアルタイムに確認できるため、重複作業や作業漏れのリスクも低減します。
安全性の面では、正確な経路走行により隣接する作物を踏んでしまうリスクが減り、作物へのダメージを最小限に抑えることが期待できます。ただし、自動操舵はあくまで「補助」であり、オペレーターが安全確認を行いながら使用することが前提となります。
作業精度を向上させる代表的な技術として、RTK-GNSS測位による±2.5cmの高精度な自動操舵が挙げられます。たとえば、後付け型自動操舵システム「ALLYNAV」は、RTK使用時に±25mmの精度を実現しており、2026年1月にはニコン・トリンブルの「GFXシリーズ」が準天頂衛星「みちびき」のCLAS(センチメータ級測位補強サービス)に正式対応したことも発表されています。
また、韓国GINTの次世代モデル「Next-G」のように、既存農機に後付けで自動操舵機能を追加できる新製品も続々と日本市場に投入されており、選択肢は広がりつつあります。



※2025年8月29日調査時点。Googleで「自動操舵システム」と検索した結果の100位以内の公式HPの中から、日本国内で公表されているメーカーによる自動操舵システムの14製品の稼働速度を比較した最速値。IMUなどのオプション機能での速度も含む(編集チーム調べ)
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ALLYNAV
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FJDynamics
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トプコン
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| 製品名 | AllyNav AF305/AF718 自動操舵システム | FJD農機自動操舵システム | XD/AGS-2-SET・AES-35 |
| 初期費用 | 847,000円(税込)~ | 1,045,000円(税込)~ | 記載なし |
| 補正情報精度 | ≤±2.5cm | ≤±2.5cm | ±2~3cm |
| 速度 | 0.1~35km/h※デュアルIMUの場合 | 0.7km~12km/h (オプション:0.1km/h~) |
0.1km/h~25km/h |
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ALLYNAV
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FJDynamics
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トプコン
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|---|---|---|---|
| 対応可能経路 | ターン、直線、カーブ、曲線、Uターン、ピボット、90° | 直線、ピボット、平行カーブ、自動ターンA+ライン | 直進、枕地旋回、0.5m~小旋回性能(オプション) |
| オプション | ・リモコン&ハンドルボタン ・カメラ ・レベリングシステム |
・wifiカメラ ・物理ボタン ・ホール型センサー ・FAG独自RTK基地局 ・Bluetoothボタン |
・ホイールアングルセンサー(低速調整) ・枕地旋回機能 ・可変施肥機(散布マップ作成) ・Xlinks(ISOBUS非対応作業機でも制御可能) |
| ISOBUS対応 | 〇 | 〇 | 〇 |
| アップデート費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
| サポート体制 | 連携先の代理店によるチャット・電話などのサポート | チャットサポート・遠隔サポート・訪問サポート | フリーダイヤルコールセンター(平日9時-17時) |
| 保証期間 | 2年保証 | 最大2年保証 ※有償にて5年間延長保証にも対応。 |
1年保証 |
| 導入実績数 | 世界中で累計35万台以上(2025年6月時点)※1 | 世界中で20万台以上 国内で6,500台以上 (2025年6月調査時点)※2 |
記載なし |
※1:参照元:AllynavAG公式HP(https://www.landingpage-synergy.com/Hs7mDRdM/)
※2:参照元:FAG公式HP(https://www.fagcorp.com/voice)