畑作における自動操舵システムの活用状況は、品目や経営規模、地域の通信環境によって大きく異なります。北海道の大規模畑作地帯のように普及が進んでいる地域もあれば、中山間地域や離島のように通信インフラの制約が導入の壁になっている地域もあります。
本記事では、実際に自動操舵システムを導入した3つの実例を公開情報をもとに紹介します。
北海道津別町の株式会社鹿中農場は、たまねぎと小麦を中心に栽培する中山間地域の経営体です。JAつべつでは平成28年に「津別町スマート農業研究会」を発足し、スマート農業の導入に向けた取り組みを進めてきました。
津別町のような中山間地域では、携帯電話の電波が届かない農地があり、自動操舵システムの精度を高めるために必要なRTK補正データの取得が難しいという課題がありました。JAつべつの担当者によると、こうした通信環境の制約から、スマート農業導入の検討を始めても、スタート地点にすら立てなかった経験もあったといいます。
スマート農業実証プロジェクトへの参画を通じて、プライベートLTEを活用した衛星データ・補正情報の受信が可能になり、自動操舵システムの導入が実現しました。たまねぎと小麦を栽培する実証先の農家からは、自動操舵システムによって作業時間や身体的疲労がかなり軽減されたという声が寄せられています。あわせて、施肥の精度向上により肥料代を10%削減できたことも報告されています。また、携帯電波が届かない農地でも外部との連絡が可能になったことで、農作業中のトラブルに対応しやすくなり、心理的な安心感にもつながったといいます。
沖縄県南大東村の農業生産法人アグリサポート南大東株式会社は、島内のさとうきび生産者から耕起・植え付け・収穫・株出し管理までの作業を幅広く受託している経営体です。ハーベスタ5台、トラクタ20台を保有し、植え付けの受託面積は約444ha、その他の受託管理は859haにのぼります。
南大東島では、さとうきびの苗を一定間隔の畝に定植していく作業に高い精度が求められます。自動操舵システムの導入前は、広大な圃場への直線状の定植作業にオペレーターの高い技術と強い集中力が必要で、ストレスのかかる作業だったといいます。自動操舵なしで植え付けを行う場合には畝幅から外れてしまうことがあり、ずれが発生した後の補正はオペレーターの経験に頼っていました。
また、離島特有の事情として、以前は圃場によって衛星電波が届かず自動操舵システムを利用できない場所があり、そうした圃場ではオペレーターが手動操舵で作業せざるを得ない状況もありました。
平成30年、自動操舵システムを搭載したトラクタがけん引するビレットプランタによる植え付けが導入されました。ディスプレイ上で圃場の始点と終点を設定すると、以後は特別な操作を必要とせず、160cm間隔で正確に畝への定植が行われる仕組みで、誤差はプラスマイナス2〜3cm程度に抑えられています。
この導入により、オペレーターの技術の習熟度によらず正確な植え付けが可能になりました。熟練度の低いオペレーターであっても、熟練オペレーターが手動操舵を行うのと変わらない精度・速度での植え付けができるようになっています。従来必要だった圃場への線引き作業(1ha当たり1〜数時間を要していた作業)も不要になり、作業時間の短縮効果は大きいと報告されています。
また、令和元年からは固定基地局方式に切り替えたことで、島内のほとんどの圃場で衛星電波の受信が可能になりました。
新潟県新潟市の株式会社白銀カルチャーは、水稲46.3ha、大豆40.4ha、大麦10.3ha、枝豆8.1haなど、合計106.4haを経営する複合経営体です。
同社では、水稲と大豆の労働時間を削減しながら、収益性の高い枝豆の作付面積と売上高を拡大するという目標を掲げていました。複数の品目・作業機を扱う経営であるため、自動操舵システムをはじめとする複数のスマート農業技術をどう組み合わせて活用するかが課題となっていました。
同社では、自動操舵システム1台を、保有するトラクタ2台と田植機1台に載せ替えて活用しています。この結果、田植えの作業時間は慣行と比較して7%削減され、組作業に必要な人数も削減できました。
自動操舵システムを含む技術体系全体では、水稲の10a当たり労働時間が北陸平均値と比べて62%削減(20.50時間→7.86時間)、大豆の10a当たり労働時間が32%削減(7.90時間→5.34時間)となり、いずれも目標を達成しています。あわせて、労働時間削減によって生まれた余力を活用し、枝豆の作付面積は平成30年実績の2倍以上(329a→832a)、売上高は46%増(8,391千円→12,251千円)を達成しました。
畑作における自動操舵システムの活用状況は、地域の通信環境や経営規模、扱う品目によって大きく異なります。大規模畑作地帯ではすでに高い普及率に達している一方、中山間地域や離島では通信環境の制約が導入の壁となってきました。それぞれの課題に応じた測位技術の組み合わせや、複数の作業機への載せ替え運用が、畑作における自動操舵システム活用のポイントになっています。
自動操舵システムの導入を検討する際は、自分の経営条件に近い事例をあわせてご確認ください。



※2025年8月29日調査時点。Googleで「自動操舵システム」と検索した結果の100位以内の公式HPの中から、日本国内で公表されているメーカーによる自動操舵システムの14製品の稼働速度を比較した最速値。IMUなどのオプション機能での速度も含む(編集チーム調べ)
|
ALLYNAV
|
FJDynamics
|
トプコン
|
|
|---|---|---|---|
| 製品名 | AllyNav AF305/AF718 自動操舵システム | FJD農機自動操舵システム | XD/AGS-2-SET・AES-35 |
| 初期費用 | 847,000円(税込)~ | 1,045,000円(税込)~ | 記載なし |
| 補正情報精度 | ≤±2.5cm | ≤±2.5cm | ±2~3cm |
| 速度 | 0.1~35km/h※デュアルIMUの場合 | 0.7km~12km/h (オプション:0.1km/h~) |
0.1km/h~25km/h |
|
ALLYNAV
|
FJDynamics
|
トプコン
|
|
|---|---|---|---|
| 対応可能経路 | ターン、直線、カーブ、曲線、Uターン、ピボット、90° | 直線、ピボット、平行カーブ、自動ターンA+ライン | 直進、枕地旋回、0.5m~小旋回性能(オプション) |
| オプション | ・リモコン&ハンドルボタン ・カメラ ・レベリングシステム |
・wifiカメラ ・物理ボタン ・ホール型センサー ・FAG独自RTK基地局 ・Bluetoothボタン |
・ホイールアングルセンサー(低速調整) ・枕地旋回機能 ・可変施肥機(散布マップ作成) ・Xlinks(ISOBUS非対応作業機でも制御可能) |
| ISOBUS対応 | 〇 | 〇 | 〇 |
| アップデート費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
| サポート体制 | 連携先の代理店によるチャット・電話などのサポート | チャットサポート・遠隔サポート・訪問サポート | フリーダイヤルコールセンター(平日9時-17時) |
| 保証期間 | 2年保証 | 最大2年保証 ※有償にて5年間延長保証にも対応。 |
1年保証 |
| 導入実績数 | 世界中で累計35万台以上(2025年6月時点)※1 | 世界中で20万台以上 国内で6,500台以上 (2025年6月調査時点)※2 |
記載なし |
※1:参照元:AllynavAG公式HP(https://www.landingpage-synergy.com/Hs7mDRdM/)
※2:参照元:FAG公式HP(https://www.fagcorp.com/voice)