自動操舵システムの導入効果は、経営規模やほ場の条件、抱えている課題によって現れ方が異なります。大規模な複合経営もあれば、家族経営に近い小規模な水稲農家、あるいは中山間地域で小区画のほ場を数多く抱える経営もあります。
本記事では、水田作における自動操舵システムの活用事例を3つ、公開情報をもとに紹介します。
千葉県柏市で農業を営む柏染谷農場は、水田79haという大規模な経営規模を持ちながら、水稲を中心に麦・大豆・ジャガイモなど複数の作物を組み合わせた複合経営を行っています。代表を務める染谷茂氏のもと、家族と10名のスタッフで農場を運営しています。
田植えや代かき、ロータリ作業、肥料散布など、直進性が求められる作業が多岐にわたり、経験の浅いスタッフでは真っ直ぐ走らせること自体に神経を使い、精神的な余裕を持ちにくい状況にありました。同農場のスタッフは就農1〜2年目の若手が多く、まっすぐ植えようとするだけで気持ちに余裕がなくなってしまうという声があったといいます。
また、除草剤を同時施用する田植え作業では、従来は田植機のマーカーでラインを合わせる方式を取っており、その際には一旦水田から水を落とす必要がありました。この水の出し入れの工程が、作業時間のロスにつながっていました。
自動操舵システムの導入により、手放しでも真っ直ぐ植えられるようになったことで、作業中の精神的な余裕が生まれたといいます。この余裕によって、後方の植付け状況の確認や、走行しながらの苗・肥料補給といった同時作業も行えるようになりました。同農場の水田は長いところで250mに及びますが、経験の浅いスタッフでも真っ直ぐ綺麗に植えられるようになったと紹介されています。
また、水の出し入れの工程自体が不要になったことで、田植えと同時に散布する除草剤が水の動きによって流出しにくくなり、本来の効果を発揮しやすくなったとも紹介されています。田植機とトラクターの両方に自動操舵システムを載せ替えて使用しており、水稲以外の大豆やジャガイモの作業にも展開している点が特徴です。
岡山県岡山市で米づくりをしている西岡農園の西岡幸夫氏は、水稲3.2haを兼業で営んでいます。2022年から農薬・化学肥料を慣行栽培の半分以下に抑えた特別栽培米に取り組み、翌年からは農薬・化学肥料を使わない栽培方法に移行しました。高齢化や担い手不足という地域の課題解決を目指し、スマート農機の活用にも積極的に取り組んでいます。
農作業はほとんど1人で行っており、長時間のトラクター作業は重労働だったといいます。ずっと運転操作に集中する必要があるため、眼精疲労や肩こりが悩みだったほか、どんなに集中していても一瞬気を取られて曲がってしまうことがあり、作業できていない部分を埋めるために一往復余分に作業することもあったそうです。3年ほど前に直進アシスト付きの田植機を導入した際、まっすぐ植えられる楽さを実感し、トラクターにも同様の機能が欲しいと考えるようになりました。
2023年11月、トラクターの買い替えに合わせてジョンディアの自動操舵システムを導入しました。決め手は精度の高さと維持管理費の安さで、ジョンディアの自動操舵は独自の補正信号システムを採用しているため、通信費がかかるRTKを使わずに運用できる点も評価されています。
導入後、オフセットモアを使った草刈り作業では、自動でまっすぐ進むためハンドル操作から解放され、後方の作業機の確認だけで済むようになり、作業後の疲労が大きく軽減されたといいます。今後は耕うん作業や緑肥の播種・刈り取り、有機肥料の散布作業など、幅広い場面での活用を計画しています。西岡氏は、経験や勘に頼らず未経験でも簡単に操作できる点が、新規就農のハードルを下げ、地域農業の担い手不足の解消にもつながると期待を寄せています。
島根県奥出雲町でブランド米「仁多米」を中心に水稲70ha、ソバ3haを栽培する有限会社コスモ21は、藤原康正氏が代表を務める経営体です。5人の従業員とともに、地域の水田を担っています。
奥出雲町は中山間地域で、ほ場1枚あたりの面積が10a〜20aと小さく、枚数にすると約650枚という多筆構成が特徴です。藤原氏は当初、自動操舵システムに興味を持っていませんでした。トラクター操作に自信があり、若いスタッフでもある程度指導すれば運転できるようになるという考えがあったためです。
しかし、3年ほど前に他メーカーの自動操舵付きトラクターを実際に運転したことをきっかけに、この考えが変わったといいます。
まずヤンマーの直進アシスト機能を搭載したトラクターを導入し、高精度な作業性を実感しました。その後、新たにトラクターを導入する際、希望していた機種に純正の自動操舵機能が搭載されていなかったため、ジョンディアの自動操舵システムを装着することを選びました。決め手は、RTKが不要で通信料がかからない点と、独自の補正信号システムによりRTKを使わなくても±15cmの精度が得られる点、加えてアフターサービスの充実だったといいます。
秋起こしの作業では、外周2周分を残して内側から耕う作業を行う際、従来は重ね過ぎや重ならなさによる周回数のずれが生じていましたが、自動操舵の導入後は重複幅がほぼ15cm以内に抑えられ、予定通りの周回で作業できるようになりました。1回の往復のロスをなくすことで10分の時間短縮につながり、1日20枚のほ場で秋起こしを行う場合、1〜2時間の作業時間短縮になるといいます。同社では、入社から3年目までは自動操舵を使わせず、基本操作を身につけさせてから活用させる方針を取っており、機械に頼りきらないオペレーター育成にも取り組んでいます。
3つの事例からわかるように、自動操舵システムの効果の現れ方は、経営規模やほ場条件、抱えている課題によって異なります。大規模な複合経営では新人でも一定の作業品質を保てる点が、少人数経営では長時間作業の疲労軽減が、中山間地域の多筆経営では小さな重複の削減による時間短縮が、それぞれ主な効果として報告されています。
自動操舵システムの導入を検討する際は、自分の経営条件に近い事例をあわせてご確認ください。



※2025年8月29日調査時点。Googleで「自動操舵システム」と検索した結果の100位以内の公式HPの中から、日本国内で公表されているメーカーによる自動操舵システムの14製品の稼働速度を比較した最速値。IMUなどのオプション機能での速度も含む(編集チーム調べ)
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ALLYNAV
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FJDynamics
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トプコン
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|---|---|---|---|
| 製品名 | AllyNav AF305/AF718 自動操舵システム | FJD農機自動操舵システム | XD/AGS-2-SET・AES-35 |
| 初期費用 | 847,000円(税込)~ | 1,045,000円(税込)~ | 記載なし |
| 補正情報精度 | ≤±2.5cm | ≤±2.5cm | ±2~3cm |
| 速度 | 0.1~35km/h※デュアルIMUの場合 | 0.7km~12km/h (オプション:0.1km/h~) |
0.1km/h~25km/h |
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ALLYNAV
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FJDynamics
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トプコン
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|---|---|---|---|
| 対応可能経路 | ターン、直線、カーブ、曲線、Uターン、ピボット、90° | 直線、ピボット、平行カーブ、自動ターンA+ライン | 直進、枕地旋回、0.5m~小旋回性能(オプション) |
| オプション | ・リモコン&ハンドルボタン ・カメラ ・レベリングシステム |
・wifiカメラ ・物理ボタン ・ホール型センサー ・FAG独自RTK基地局 ・Bluetoothボタン |
・ホイールアングルセンサー(低速調整) ・枕地旋回機能 ・可変施肥機(散布マップ作成) ・Xlinks(ISOBUS非対応作業機でも制御可能) |
| ISOBUS対応 | 〇 | 〇 | 〇 |
| アップデート費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
| サポート体制 | 連携先の代理店によるチャット・電話などのサポート | チャットサポート・遠隔サポート・訪問サポート | フリーダイヤルコールセンター(平日9時-17時) |
| 保証期間 | 2年保証 | 最大2年保証 ※有償にて5年間延長保証にも対応。 |
1年保証 |
| 導入実績数 | 世界中で累計35万台以上(2025年6月時点)※1 | 世界中で20万台以上 国内で6,500台以上 (2025年6月調査時点)※2 |
記載なし |
※1:参照元:AllynavAG公式HP(https://www.landingpage-synergy.com/Hs7mDRdM/)
※2:参照元:FAG公式HP(https://www.fagcorp.com/voice)