農作業の効率化について調べていると、「自動操舵システム」という言葉を目にすることがあります。
自動操舵システムは、GNSSなどの衛星測位を利用して農機の位置を把握し、設定した走行経路に沿うようにステアリング操作を自動化するシステムです。
この記事では、自動操舵システムの基本から、中古トラクターへの後付け、対応機種を確認する方法、費用の考え方、測位方式や導入後のサポートまで解説します。
自動操舵システムとは、GNSSなどの衛星測位を利用して農機の位置を把握し、設定した走行経路に沿うようにステアリング操作を自動化するシステムです。
GNSSは、GPS、GLONASS、Galileo、QZSSなど、複数の衛星測位システムを総称したものです。
農業用の自動操舵システムでは、GNSSから得た位置情報に補正情報を組み合わせ、測位精度を高める方式があります。
例えばRTK-GNSSは、基準局やネットワーク型RTKサービスなどから補正情報を取得し、GNSSの搬送波位相などを利用して高精度な測位を行う方式です。
ただし、すべての自動操舵システムでRTK-GNSSが必要になるわけではありません。製品によって対応する測位方式や必要な補正サービスが異なるため、導入する作業に必要な精度と照らし合わせて選ぶことが重要です。
自動操舵では、GNSS受信機などで取得した農機の位置情報を利用して、設定した走行ラインに沿うようにステアリングを制御。オペレーターが常にハンドルを操作して直進方向を調整する負担を減らせます。
ただし、「自動操舵=農作業をすべて自動で行う」という意味ではありません。自動操舵は主としてステアリング操作を自動化する技術であり、発進・停止、旋回、作業機の制御などまで自動化できるかどうかは製品によって異なります。
「GNSSガイダンス」と「自動操舵」は、似ていますが役割が異なります。
なお、自動操舵と、無人で農機を走行させる「ロボット農機」や「自動走行」は同じ意味ではありません。自動化される範囲は製品ごとに異なるため、導入時には具体的な機能を確認する必要があります。
中古で購入したトラクターでも、対応する後付け型の自動操舵システムであれば導入できる場合があります。
農林水産省は、自動操舵システムについてトラクターなどへの後付け利用が可能な製品を紹介しています。また、農研機構のスマート農業技術カタログにも、トラクター等に後付けする自動操舵システムが掲載されています。
ただし、重要なのは「中古トラクターならどの製品でも取り付けられる」という意味ではないことです。
農研機構は、後付け型について、ハンドルと軸の間に駆動部を追加するため、機種によっては取り付けできない場合があるとしています。
そのため、購入前にはトラクターのメーカー、型式、年式、ステアリング周辺の仕様などを販売店やメーカーに伝え、使用する自動操舵システムとの適合性を確認することが重要です。
後付けタイプのメリットは、対応する製品を選べれば、現在所有しているトラクターを活用しながら自動操舵を導入できる可能性があることです。
そのため、自動操舵を導入するために必ずしもトラクター本体を新車へ買い替える必要があるとは限りません。
ただし、後付けシステムの導入には、本体価格だけでなく取付費、設定費、補正サービスの利用料などが必要になる場合があります。トラクターを買い替える場合と比較するときは、導入総額で判断することが重要です。
後付け型には、対応する農機と対応しない農機があります。
中古で購入したトラクターの場合も、型式や仕様によって対応する自動操舵システムや取付部品が異なるため、購入前の確認が重要です。
中古トラクターを購入する前に自動操舵の導入を検討しているなら、トラクターだけを先に購入するのではなく、「このトラクターに、この自動操舵システムを取り付けられるか」を確認してから判断すると安心です。
問い合わせる際は、少なくとも次の情報を用意すると確認しやすくなります。
可能であれば、車体やステアリング周辺の写真も用意すると、適合確認の参考になる場合があります。
製品によって必要な取り付け部品や対応条件が異なるため、年式や型式だけで判断せず、販売店やメーカーに確認することが重要です。
後付け型を利用できれば、現在所有しているトラクターを使いながら自動操舵を導入できます。
トラクター本体を買い替えずに済む可能性があるため、現在使用している農機をできるだけ長く活用したい農家にとって選択肢の一つになります。
農林水産省が公開している資料では、自動操舵システムの価格帯の目安として40万円~250万円が示されています。
ただし、この価格帯は資料作成時点における製品・サービスの価格情報をもとにした目安であり、2026年現在のすべての製品の実売価格を示すものではありません。また、製品によって価格の対象範囲が異なるため、購入時には販売事業者への確認が必要です。
さらに、この価格帯は自動操舵システムそのものの価格であり、中古トラクター本体の価格や取り付け費用、設定費、補正情報の利用料などを含めた導入総額とは異なる場合があります。
中古トラクターに後付けする場合も、「システム本体が安いか」だけではなく、取り付けや設定、補正サービス、購入後のサポートなどを含めた総額で比較する必要があります。
※参照元:農林水産省|スマート農業関連資料(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/products-347.pdf?utm_source=chatgpt.com)製品によっては複数の農機で利用できるものや、対応機種間で載せ替えできるものがあります。
ただし、すべての自動操舵システムが自由に載せ替えできるわけではありません。トラクターごとに取付部品、ハーネス、設定などが必要になる場合もあります。
将来の載せ替えを重視する場合は、購入前に「別のトラクターへ載せ替え可能か」「追加部品が必要か」「追加費用が発生するか」を確認してください。
中古トラクターへの後付けが、必ず新車の自動操舵対応トラクターより安いとは限りません。
後付け方式の大きな特徴は、対応する既存トラクターを活用して、本体を買い替えずに自動操舵を導入できる可能性があることです。
一方で、自動操舵システム本体、取付費、設定費、補正サービスの利用料、保守費用などが発生する場合があります。また、中古トラクター自体に整備や修理が必要であれば、その費用も考慮する必要があります。
そのため、「中古+後付け」と「新車+自動操舵」のどちらが有利かは、単純な製品価格ではなく、トラクター本体・自動操舵・取付・測位サービス・維持費を含めた総額と、今後何年使う予定なのかを踏まえて判断するのが適切です。
| 比較項目 | 既存・中古トラクター+後付け | 新車+自動操舵 |
|---|---|---|
| トラクター本体 | 現在のトラクターを活用できる可能性がある | 新車を購入する |
| 自動操舵 | 後付け対応製品を選ぶ | 標準装備・メーカーオプション・対応製品などから選択 |
| 機種選択 | 自動操舵システムとの適合確認が必要 | 選択した新車と自動操舵機能の組み合わせを確認 |
| 中古農機の状態確認 | 整備状態や故障履歴などの確認が必要 | 中古農機特有の確認は不要 |
| 取付・設定 | 機種によって必要な部品・作業が異なる | メーカー・販売店側で対応できる場合がある |
| サポート | 自動操舵メーカー・販売店・中古農機販売店などの体制を確認 | メーカー・販売店の保証・サポート条件を確認 |
どちらを選ぶかは、トラクターの更新時期、自動操舵に必要な機能、導入予算、今後の使用年数などを分けて考えると判断しやすくなります。
現在のトラクターの状態に問題がなく、買い替えの予定がない場合は、対応する後付け型を検討する方法があります。
自動操舵は設定した走行経路に沿ったステアリング操作を自動化するため、長時間の直進作業でハンドルを操作し続ける負担の軽減に役立ちます。
適切な走行経路を設定し、十分な測位精度を確保できれば、同じ場所を重複して走行したり、作業していない部分を残したりすることの低減に役立つ場合があります。
ただし、圃場の形状、GNSSの受信状態、作業速度、設定方法などによって走行精度は変わるため、自動操舵を導入すれば必ず重複ややり残しがなくなるわけではありません。
自動操舵は、ステアリング操作の負担を減らすことで、経験の浅いオペレーターの直進作業を支援し、作業精度の安定化に役立つ場合があります。
ただし、自動操舵だけですべての作業を自動化できるわけではありません。安全確認や作業機の操作、圃場の状況に応じた判断など、オペレーターが担う作業は残ります。
自動操舵対応の新車へ買い替えるのではなく、現在使用しているトラクターに対応する後付けシステムを導入する方法を検討できます。
ただし、後付けシステムの価格だけでなく、トラクターの整備状態、取り付け費、設定費、補正サービスの利用料、購入後のサポートなどを含めて比較する必要があります。
製品によっては、複数の農機でシステムを利用できるものがあります。
将来的な載せ替えや複数機での利用を考えている場合は、購入時に対応機種、必要な追加部品、設定作業、追加費用などを確認してください。
まず確認したいのが、自動操舵システムとトラクターの適合性です。
メーカー、型式、年式だけでなく、ステアリング周辺の構造や必要な取付部品なども確認しましょう。
自動操舵を選ぶときは、「どの作業で使うのか」を先に決めることが重要です。
耕うん、播種、畝立て、防除など、作業内容によって求められる走行精度は異なります。必要以上に高精度な測位方式を選ぶと、費用が増える可能性もあるため、必要な精度と費用のバランスを確認してください。
自動操舵は衛星測位を利用するため、圃場周辺の環境によって測位状態が変化することがあります。
山間部や周囲に障害物が多い場所などでは、GNSSの受信状態が悪化して自動操舵の精度が低下したり、利用できなくなったりする場合があります。
購入前には、実際に使用する圃場で安定して測位できるかを確認することが重要です。
RTK-GNSSなどの高精度測位を利用する場合は、利用する補正サービスの種類を確認してください。
基準局を利用する方式や、ネットワーク経由で補正情報を受け取る方式などがあり、製品・サービスによって必要な通信環境や契約内容が異なります。
自動操舵を選ぶ際は、トラクターだけでなく使用する作業機も確認しましょう。
作業機の幅や作業速度、必要な精度、作業機制御との連携などによって、必要となる機能が変わる場合があります。
システム本体の価格だけでなく、ステアリング周辺への駆動部の取り付け、配線、GNSSアンテナの設置、設定作業などに費用がかかる場合があります。
購入前に、本体価格と工賃を分けて確認し、最終的な導入費用を把握しておきましょう。
自動操舵システムは、購入して取り付ければ終わりとは限りません。
故障時の修理、補修部品の供給、ソフトウェア更新、設定変更、測位サービスの契約などについて、購入後にどのようなサポートを受けられるのか確認しておくと安心です。
製品によっては、RTK等の補正サービスや通信サービスなどに継続的な利用料がかかる場合があります。
初期費用だけで判断せず、購入後の年間費用や必要な契約期間まで含めて比較しましょう。
自動操舵システムは、GNSSなどの衛星測位を利用して農機の位置を把握し、設定した走行経路に沿うようにステアリング操作を自動化するシステムです。
農林水産省や農研機構では、トラクターなどに後付けできる自動操舵システムが紹介されています。
そのため、現在使用しているトラクターや中古で購入したトラクターについても、対応する自動操舵システムがあれば、トラクター本体を買い替えずに自動操舵を導入できる可能性があります。
一方で、後付けできるかどうかはトラクターの型式や構造、使用する製品などによって異なります。また、中古で自動操舵システムを購入する場合も、価格だけで判断するのは避けたほうがよいでしょう。
導入前には、次の項目を確認してください。
自動操舵システムは、「価格が高い製品を選べばよい」というものではありません。
現在使っているトラクター、作業内容、必要な走行精度、GNSS・通信環境、予算、購入後のサポートまで確認したうえで、自分の農業経営に合う製品を選ぶことが重要です。
まずは現在使用しているトラクターのメーカーと型式を確認し、使用したい作業と必要な精度を整理したうえで、対応する後付け自動操舵システムがあるかを販売店やメーカーに確認することから始めるとよいでしょう。



※2025年8月29日調査時点。Googleで「自動操舵システム」と検索した結果の100位以内の公式HPの中から、日本国内で公表されているメーカーによる自動操舵システムの14製品の稼働速度を比較した最速値。IMUなどのオプション機能での速度も含む(編集チーム調べ)
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ALLYNAV
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FJDynamics
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トプコン
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|---|---|---|---|
| 製品名 | AllyNav AF305/AF718 自動操舵システム | FJD農機自動操舵システム | XD/AGS-2-SET・AES-35 |
| 初期費用 | 847,000円(税込)~ | 1,045,000円(税込)~ | 記載なし |
| 補正情報精度 | ≤±2.5cm | ≤±2.5cm | ±2~3cm |
| 速度 | 0.1~35km/h※デュアルIMUの場合 | 0.7km~12km/h (オプション:0.1km/h~) |
0.1km/h~25km/h |
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ALLYNAV
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FJDynamics
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トプコン
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|---|---|---|---|
| 対応可能経路 | ターン、直線、カーブ、曲線、Uターン、ピボット、90° | 直線、ピボット、平行カーブ、自動ターンA+ライン | 直進、枕地旋回、0.5m~小旋回性能(オプション) |
| オプション | ・リモコン&ハンドルボタン ・カメラ ・レベリングシステム |
・wifiカメラ ・物理ボタン ・ホール型センサー ・FAG独自RTK基地局 ・Bluetoothボタン |
・ホイールアングルセンサー(低速調整) ・枕地旋回機能 ・可変施肥機(散布マップ作成) ・Xlinks(ISOBUS非対応作業機でも制御可能) |
| ISOBUS対応 | 〇 | 〇 | 〇 |
| アップデート費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
| サポート体制 | 連携先の代理店によるチャット・電話などのサポート | チャットサポート・遠隔サポート・訪問サポート | フリーダイヤルコールセンター(平日9時-17時) |
| 保証期間 | 2年保証 | 最大2年保証 ※有償にて5年間延長保証にも対応。 |
1年保証 |
| 導入実績数 | 世界中で累計35万台以上(2025年6月時点)※1 | 世界中で20万台以上 国内で6,500台以上 (2025年6月調査時点)※2 |
記載なし |
※1:参照元:AllynavAG公式HP(https://www.landingpage-synergy.com/Hs7mDRdM/)
※2:参照元:FAG公式HP(https://www.fagcorp.com/voice)